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2016年10月18日 (火)

ジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』読了

スペイン戦争(内乱)に義勇兵としてファシストと戦ったオーウェルのルポルタージュ。オーウェルはディストピアSF「1984年」を書いた。自分も早川の世界SF全集を全巻持っているのだけれど、ハクスレィの「素晴らしき新世界」を読んでディストピアものが読めなくなり、今は段ボール箱の中に眠っていて、未だに読んでいない。「カタロニア賛歌」に戻るとオーウェルのシンプルな反ファシストぶりと牧歌的とも言える前線での戦闘。それは雰囲気だけで、実際は汚物と食料、武器不足の中で寒さに震えるといった状況が背景にあるわけだが。その反ファシスト側も陰謀やなんやからで欺瞞に満ち、内部崩壊していく。それを遠く離れたイギリスでは一方的にデマに満ちた記事を新聞は垂れ流す。仲間を内ゲバで無意味に殺されたオーウェルにとっては許せないものだったろう。それでもバロセロナに対してもそのスペイン気質を称えている。巻末の「スペイン戦争を回顧して」に以下の一文がある。
私見によると、根拠が充分ではないとしても、民衆は遅かれ早かれその闘いに勝つだろうが、私としてはその時が一日も早くきてもらいたいのだーたとえば、せめて百年以内に、まあ一万年以内ということではなくて。(新庄哲夫訳)
この本は汚い戦争を暴いているのだが、オーウェルのこの素朴で強固な精神が反映されていて清々しいと言ってはなんだが、勇気づけられる側面を持っている。

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