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2014年2月

2014年2月25日 (火)

宮武外骨 『アメリカ様』読了

ネットの国会図書館・蔵六文庫で只で読んだ。外骨って「とほね」と読むんだ。蔵六も亀のことで外骨格との洒落らしい。アメリカに負けて得た自由。軍閥、財閥、官僚、大新聞嫌いの外骨がアメリカ様と持ち上げている。自分のことを半米人と呼ぶ。これも米寿ならぬ自分の八十歳とかけている。革命を持たざる国と詠んだのは斎藤史だが、外骨は日本帝国が日本国になったのは不当と言っている。独立国の資格を失って外国の占領地なのにということらしい。これもアメリカ様の命令かと皮肉っている。結局斎藤史の日本観と同根と思える。皮肉、罵倒に満ちた本だが、それだけでは捉えられない何かがある。「南方に於ける地名の記憶法」の項では思ったよりもカルカッタ、相撲とらうのスマトラ、女学生の笑ふXXツカ等々。と言ったかと思うと「短句といふ最小十四文字の詩」では、<津波の町の揃ふ命日>という句が紹介されている。癇癪もちで、粋で、侠気があってその上色気もある寂しがりやの怪人なんだろう。

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2014年2月19日 (水)

PKD『市に虎声あらん』読了

PKDのSFじゃない普通小説。昔題名を忘れたが、彼の非SF小説を読んだが全然印象に残っていない。普通小説と書いたがこれは本当にSFじゃないのだろうか。山形浩生はディックの原石とこの小説を称したがまさにこの本はディックのSFそのものだ。彼のSFの殆どはストーリーが破綻しているが、最後はなんとかまとめている。この小説は主人公の生き方そのものが破綻しながらも最後の落ちは何だろう。彼をとりまく脇役は皆ある意味主人公を崇拝し、それが判らないのは彼だけだ。その苛立ち。最後に彼の小さな楽園で皆が望む救世主になるのだろう。それは彼の望みだったのか。彼のSFを読む鍵があるとかは言いたくない。ディックが好きなら否応なく引き込まれるはずだ。こんな良い小説が埋もれながら、PKDのSFは死後も売れ続ける。私も単なる自慢だが、サンリオ含め多分彼のSFはコンプしている。レムのディック論も訳者が違う三冊を持っている。最後にペダンチックでキッチュなディックらしい翻訳をしてくれた訳者に感謝したい。(訳注もすばらしい!)

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2014年2月 3日 (月)

『サラゴサの写本』全長版1999年を観る

ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿』の映画版、ポーランド映画。今年、工藤幸雄の完訳版が出るとのことで、楽しみにしている。この映画は3時間の大作だが、ジプシーの長の話の場面がやや冗長に思えた。ここは今までの翻訳では出て来なかった。映画は一応謎解きをしてくれているが、『サラゴサ手稿』の面白さはそこにはないと思うので、これから完訳版を読む妨げにはならないだろう。映画は白黒で原作の雰囲気が伝わる。ぐるぐる話が回る感じが良い。女優もいい。映画に出てくるくらいの絵入りの分厚い写本が原作なら、なお面白いだろうな。工藤幸雄は最後のブログで「ごきげんよう」と逝ってしまったが、またあの詳しい脚注入りの翻訳が読めると思うと本当にうれしい。感謝します。

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