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2013年8月13日 (火)

ヨーゼフ・ロート『聖なる酔っぱらいの伝説』を読む

5篇からなる短篇集。ヨーロッパ辺境ガリチア生まれのユダヤ人作家。「蜘蛛の巣」テオドール・コーゼの出世譚。ユダヤの夫人に憧れ、ユダヤ人を憎み、ユダヤ人に利用され、最後は名家の娘エルザを娶る。彼は蜘蛛なのか、それとも蜘蛛の巣に絡めとられて血を吸われた抜き殻なのか。この小説ではしたたかなユダヤ人が魅力的だ。それに比べ自分が裏切った画家クラフテンが暴いた己の醜い真実を描写した肖像画を自宅に飾っても何も感じなく無くなっていくテオドール・コーゼのみすぼらしさ。「四月、ある愛の物語」人生は大事なもんだ。そうだとも。だが無情な話。「ファルメライヤー駅長」激烈な愛の話、男はこうありたいと思うときがある。「皇帝の胸像」民族自立、独立なんてなんなのか。モルスティン伯爵の高貴な生き様。「聖なる酔っぱらいの伝説」奇跡の連続。ちいさなテレーズのご加護。人間は弱いけど、プライドってものがあるさ。読後感が苦しい順に並べてあるような気がする。

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