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2013年8月30日 (金)

ブッツァーティ『タタール人の砂漠』を読む

幸せな人生とは笑って死ねることと言ったのは誰だったか。主人公ドラーゴの人生は多分無意味とも言えるし、また幸福な人生だったのかも知れない。アングスティーナの死のように妖精が迎えにくるような優美な死ではないが、結局彼もまた同じように死を迎え入れた。彼が夢でみた子どものアングスティーナと実際のアングスティーナ中尉の死の場面は重なり合い美しい。と、同時にドラーゴは夢を見た時点で自分にはそのような事は起こらないと自覚したはずだ。だが、最後に彼はようやく自らを満足させることに成功したと思う。任務は報われたのだろう。タタール人というと「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った」を思い起こす。なぜかこの一行詩を忘れられない。それは私だけではないだろう。この本の読了後の感傷的な気分を増幅させる。奇妙なシンクロニシティを感じた。

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