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2013年7月29日 (月)

エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』を読む

ナイジェリアの小説。1952年。原題「The Palm-Wine Drinkard and His Dead Palm-Wine Tapster in the Deads' Town」Tapsterはバーテンダーとか給仕人とあるが本書ではやし酒つくりの名人と訳されている。まず気になるのは主人公飲む大量のやし酒とそれを供給する名人の技である。多分、発酵の進んでない(アルコール度数の少ない)酒ではないか。また作られる量に関しては名人は酵母をふんだんに使用したか何らかの魔術を使って発酵を早めていたのではないかと野暮なことを先に考える。森とか精霊とか死神とか水木しげるのようだ。より始原的な部分では諸星大二郎の「マッドメン」を思わせる。「不帰の天の町」では傾斜の急な丘陵の中腹に家を建てる生物が出てくる。これも「遠い国から」を思い出させる。また「混血の町」の裁判では宮澤賢治の「どんぐりと山猫」の一郎少年の困惑を。いろんな神話や童話やマンガの混淆のような話だ。あとがきによるとこの小説は「恐怖」対「モラル」の話でもあるという。確かに主人公夫妻は「死」は売ってしまって死ぬことはないが「恐怖」は買い戻してしまった。また主人公は人間であり神であり善である。小説は短いが能書きは長くなってしまった。このナイジェリアのヨルバ王国の人民はキューバまで奴隷として送られカルペンティエ-ルの「エクエ・ヤンバ・オー」の元となった。

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