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2012年10月 5日 (金)

ボフミル・フラバル『厳重に監視された列車』読了

フラバル・コレクションとある。松籟社はこれからもボフミル・フラバルの作品を出版してくれるのだろう。有難い。この中篇もフラバルらしい切ない話だ。チェコの小さな駅の駅員の話。内容的には暗い話なのに何故かフラバルの作品は清潔さというか純粋さがある。若いフルマの悩みは当然ながら、ベテラン駅員フビチカも俗っぽいけど何か真剣。駅長さんの滑稽さと憤懣。フルマは壁職人に扮した神に一度は救われた。しかしマーシャ(ああなんと可愛い)とは結ばさせず、ヴィクトリアという鍵をくれた。そしてフルマは男になった。しかし二度目は救ってくれなかった。フラバルは皮肉ぽく書いていてもいつも根底に真面目なユーモアがある。作中に出てくるドレスデンの大火災はカート・ヴォネガット・ ジュニアの『屠殺場5号』の大空襲と同じか。So it goes.フラバルにしてもヴォネガットにしてもあまりにも悲惨な体験をするとただ嘆き悲しむだけでなくなるのだろう。中篇だけど相変わらず中身のびっしり詰まったフラバルらしい小説だ。

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