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2012年1月24日 (火)

カルペンティエール『失われた足跡』を読む

カルペンティエールはキューバの作家。とにかく読むのに時間がかかった。ギュンター・グラスの濃縮小説とは異なるが、細かく濃厚な描写。同じマジック・リアリズムと言われるガルシア=マルケスの「百年の孤独」とも違う。細部へのこだわりでひとつのエピソードが長く疲れた。しかし最後の方の高地の場面はよかった。神話の石器時代への逆行の旅とあっけない現代への帰還。現代人の主人公の揺れ動く心情と裏切り。Ⅵ章の初めにケベードの『夢』から「そして、死は死ぬのをやめることであり、誕生とは死を始めることである、そして生とは生きながら死ぬことである」という文章をもってきている。これは折角、原初の神話の世界までたどりついた主人公が引き戻され、また自ら戻った現実世界のことだろう。もう彼には同じ道をたどり引き返すことは不可能だ。カルペンティエールの『失われた足跡』にはロサリオに示される地母神的な存在への憧れを感じる。それがムーチェやルースに対する反感となり、また自己嫌悪となる。だけど<あなたの女>はいい言葉だな。

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