2018年2月20日 (火)

ロマン・ギャリ『ペルーの鳥 死出の旅へ』読了

リトアニア生まれのユダヤ系作家の16の短編からなる小説集。ロマン・ギャリは題名から勝手に南米人かと思って最後まで読んでいた。恥ずかしながら、あとがきでフランス国籍の有名な作家だと知った。道理で多国籍ぽい小説集だと思った印象が理解できた。全体に暗いトーン。表題作はそう言われると奥さんのジーン・セバーグが主演したゴダールの「勝手にしやがれ」ぽい倦怠感がある。一番印象に残った作品は「世界最古の物語」ホロコーストを奇跡的に生き残ったふたりのユダヤ人。なぜかスティーヴン・キングの短編集「恐怖の四季」の中の「ゴールデン・ボーイ」の気持ち悪さに通じる。もしかしたらキングはギャリの短編を読んでいたのではと思う。「われらの輝かしいパイオニアたちに栄光あれ」はSFなんだろうが、東欧の小説家に見られる人間への不信感が感じられた。「地球の住人たち」は哀しい。「デカダンス」もギャング映画みたいで泣かせるし他の短編も完成度が高い。多分、ロマン・ギャリを今まで名前すら知らなかったことは恥ずべきことなんだろう。

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2018年1月30日 (火)

ブッツァーティ『魔法にかかった男』読了

20篇からなる短篇集。大体が皮肉に満ちた奇想短編。もっと昔に早川あたりで出してくれたら良かったのに。一番、気持ちの悪いのは「家の中の蛆虫」日本のSF、安部公房あたりに似たような話「友達」?がなかったか。「巨きくなるハリネズミ」これも日野日出志の「はつかねずみ」を思い出す。こうみるとブッツァーティは日本人と親和性が高いのかと思ってしまう。結構、オチが判ってしまう話も多いがそれはそれで読ませる話ばかり。好きなのは「エレブス自動車整備工場」。地獄に行く資格もなくなるとなんとういう悲劇。逆に「個人的な付き合い」は悲劇の悲劇と言ったらよいか。これも似たような話がバラードの「千年王国のためのユーザーズガイド」で紹介されていた天国の話と表裏一体。キリスト教も大変。あと2冊出ると言うので楽しみ。

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2018年1月29日 (月)

『コングレス未来学会議』2013を観た

原作はスタニスラフ・レム「泰平ヨンの未来学会議」(自慢だけど集英社版を持っている)映画にはヨンは出てこない。女優が金銭と引き換えに自分をスキャンさせる。そして20年後未来学会議に招待される。そこではドラッグで満たされたアニメの世界。そこで騒動が起こりまた未来へ。一度は現実に戻るがそこは余りにも暗く貧しい世界。結局、またアニメの世界へ戻る。原作の方はドラッグ、ドラッグで訳の分らん物語だったような。確かレムもドラッグの実体験をしていたと思うが。映画は一応ストーリーがちゃんとありアニメも面白い。「ソラリス」を書いたレムとは別の泰平ヨンシリーズの皮肉、暗さもある。でも折角だから泰平ヨンを出してもっとどたばたした映画を観たかったのが本音。まじめなSF(映画では頻りにサィ・ファイと言って馬鹿にしていたが)としてはピルクスあたりを映画化してほしいと願う。

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2018年1月16日 (火)

『イヴのいないアダム ベスター傑作選』アルフレッド・ベスター読了

10篇からなる中短篇集。ベスターは40年以上前に「虎よ、虎よ!」を早川SF全集で読んだのがはじめだと思う。「コンピューター・コネクション」は読んだと思うが憶えていない。どちらにしてもそれほど思い入れのない作家だった。しかしこのホラーがかったSF傑作選は面白い。一番好きなのは、「昔を今になすよしもがな」この結末は恐ろしい。あと「ごきげん目盛り」「イヴのいないアダム」「願い星、叶い星」も確かに傑作だ。やはり1950年前後のSF黄金時代はすごいと思う。今、読んでも古くない。「イヴ~」1963年初出だけど。「分解された男」は買った?けど読んでいないような。読みたいけど、まだ積読本があるし多分読まない気がする。

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2017年12月13日 (水)

『フィリップ・K・ディックの世界』ポール・ウィリアムズ読了

この本はペヨトル工房から1991年出た本を一部改訳したとある。とすれば、多分買ってあると思うが、引越しで本は貸しコンテナの中の段ボールのどれかに入っているはずだが、今は捜す気力もないし、そもそも有るのか、本当に読んだのか記憶も覚束ない。この本にはディックの家襲撃事件をもとにポールがディックにインタヴューしているわけだが、それが事件の解明を口実にディックの創作の秘密に迫っている構造になっている。ディックはSFではなく主流小説を書きたかったが、それは生前あまり評価されなかった。わたしも「戦争が終り、世界の終りがが始まった」とか「ニックとグリマング」とか読んだ気がするが、あまり印象に残っていない。数年前の処女作「市に虎声あらん」は面白かった。一番はじめにPKDを知ったのは早川の世界SF全集の「虚空の眼」でベスターの「虎よ!虎よ!」と一緒の巻だった。それから「火星のタイムスリップ」「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」これは珍しくハードカバー。「ユービック」等々。一番好きなのは「暗闇のスキャナー」。サンリオには随分お世話になった。やはりPKDが好きな人にはこの本は読んどくべきだろうな。ディックの小説は詳細は理解できなくてもO.K。哀しく感じられればそれが全て。昨日スピルバーグの映画「マイノリティ・リポート」を観たが、プレコグなんて久しぶりに聞いた。懐かしい。面白かったけど、説明多すぎだろう。もっと気楽に作って、エンディングも暗めでと思った。

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2017年11月22日 (水)

『火の書』ステファン・グラビンスキ読了

グラビンスキ「動きの悪魔」「狂気の巡礼」に続く3冊目の短編集。
今回は9編からなる。最後の方にインタビューや作家ノート風の文章が載っている。原書の9作目をオリジナリティがなく小説でもないので「有毒ガス」に差し替えた日本独自の短編集とのこと。今回は「有毒ガス」を除き「火」をテーマにした幻想小説。一番好きなのは「花火師」宮澤賢治の「よだかの星」みたい、格好よさ。「有毒ガス」は当時はポルノまがいと言われたらしいが、スチーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」のよう。「白いメガネザル」の煙突掃除の話もいい。フラバルの「剃髪式」のビール工場の煙突を思い出した。グラビンスキは訳が良いせいで読みやすく、読後感も内容に比べて悪くない不思議な幻想作家。今回は帯にもラブクラフトは出てこない。やはりどちらかというと作者が評価しているポーの雰囲気に近い気がする。

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2017年11月 9日 (木)

『ルーヴルの猫』上下巻 松本大洋を読む

新作が出ていたとは知らなかった。

大洋のセンシティヴな世界。「SUNNY」に通ずる世界だろう。

子供から大人への踏み出す一歩の危うさ。相変わらず絵も物語もうまいな。

個人的にはこういう大洋の世界もいいが「ストレート」「ゼロ」「鉄コン筋クリート」「ピンポン」「竹光侍」のようなバトル系、ファイト系の方が本当はより好きなんだけど。今回も猫と犬の争いとか相変わらず迫力あるし。次回はその路線を期待。

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2017年11月 2日 (木)

サン=テグジュペリ『夜間飛行機』『南方郵便機』読了

新潮文庫。堀口大學訳。
「夜間飛行機」南米が舞台の初期の航空郵便配達パイロットの話。颶風という言葉を初めて知った。強いて言えば未踏峰に挑む登山家のよう。全体がセピア色のような小説。映画「カサ・ブランカ」のような趣き。空を自由に飛びたいな。そのままの小説なので感想があまり浮かばない。
「南方郵便機」はアフリカ空路の方。恋愛がある。それでも飛行機の方が良い。砂漠の中の軍曹は「タタール人の砂漠」を思いだす。
2作とも悲劇的結末があまり好みではないが、いかにも古典的な名作の味わいがある。
「星の王子様」読んでいないけど、どんなんだろうか。

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2017年10月 5日 (木)

『主の変容病院・挑発』スタニスワフ・レム読了

「主の変容病院」はレムのデビュー作。非SF作品だが、レムらしい雰囲気に溢れている。レムコレの最後を飾るに相応しい。レムのSFの魅力はなんといっても、そのスケールの大きい世界観と緻密な論理構成とそれこそ既読感を感じさせない発想の豊かさ。等々。若い医師がナチスに翻弄され、また師事する詩人のみじめさに打ちのめさせられる。しかし救いのある最後の場面は美しい。観音さまのようなノシレフスカ。レムは非SFでも面白い。大好きなPKDの処女作「市に虎声あらん」も良かったし、結局好きな作家のデビュー作はのちの作品群を思うとその面影を保っていて、そこに魅かれるということか。「挑発」はメタフィクションで『ジェノサイド』『人類最後の一分間』あとそれとは別に「二一世紀叢書」として『創造的絶滅原理 燔祭としての世界』『二一世紀の兵器システム、あるいは逆さまの進化』が収められている。「人類最後の一分間」以外は初訳。「二一世紀叢書」の2品はそれぞれ「大失敗」や「砂漠の惑星」を感じさせる。挑発はレムの博識ぶりと興味分野の広さと論理に執拗さが出ていて面白い。
とにかく国書のレムコレは完了した。もっともっと読みたいのに・・・

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2017年8月20日 (日)

『永久パン 他一篇』ベリャーエフ読了

「永久パン」「開け、ゴマ!」の二篇。
永久パンはベリャーエフ得意の天才科学者もの。レムの「闇と黴」を思わせる。少し暗いかな。なんか大衆への醒めた視線を感じる。
開け、ゴマ!はロボットもの。それよりも主人公と召使の二人が哀れを誘う。ベリャーエフはいい。

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